帰宅
たもつ


休耕田に群生する
セイタカアワダチソウをかきわけるように
一両の気動車が港の方へと走っていく

スズメガの幼虫にかじられた痕のある
サトイモの大きな葉が
その風に揺れている

排水機場の角を曲がり
傾斜の緩い坂道を上る
左手に関東ロームの台地が広がっている
しばらく歩くとぽつぽつ民家が見え始め
やがて先には新興の住宅地がある

珍しくもない黒いスレート屋根の家
その前のアスファルトに
建物の解体現場から拾ってきた白い棒状のもので
小鳥を描いた
むかし広告の裏にあなたが描き方を教えてくれた
種類の曖昧な
飛べそうもない小鳥

どうかあなた
それを目印に
小さな骨壷に入っても
迷うことなく帰って来られますように





自由詩 帰宅 Copyright たもつ 2006-12-21 14:08:40
notebook Home 戻る