白い吐息の季節に
ささやま ひろ

本を読むのが好きなら
スエードの手袋がいいよって
3回目のデートの時に教えてくれた君

手袋はあたたかいのが一番だと思っていた僕

そりゃあ雪だるまを作る時には
撥水のがいい
スキー用みたいなやつ

思いもつかなかった

文庫本の頁をめくる
財布から小銭を取り出す
スーパーでレジ袋を広げる
改札で定期を入れる

なんだって出来るんだ

おかげで僕は
手袋への価値観を変えることになった

考えてみたらそれだけじゃない

上手なクリーニング店の見分け方や
一番使いやすい手帳
夕日占いに
人をいたわる心


かけがえのない瞬間


いくつかの冬を越えて
いくつかの瞬間は色褪せたけれど

スエードの手袋は
今年の冬も僕をあたためてくれる


おそろいは恥ずかしいけど
あした二人で
新しいのを買いに行こう





自由詩 白い吐息の季節に Copyright ささやま ひろ 2006-12-20 23:55:08
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