トマトジュース
朽木 裕

横たわるアスファルトにトマトジュースと云う名の
血を吐く私は死体。

学校から盗んできた白いチョークで人をかたどる
友達はさしずめ第一発見者。
それもとびきり胡散臭い。

アスファルトはほんの僅か熱を持ち、私を焦がす。
焦がされた私は地面に車の響きを探す。

探してどうしようって云うんだろう。
逃げる気なんてさらさらないくせに。
それとも望んでいるからだろうか。
この身体の上を車が、と。

でも人間柘榴はご免だよ。
どうせなら綺麗に死にたいもの。
真紅の血を口から一筋流して綺麗に。

閉じ込められたチョークの檻。
地面を這い空を仰いだ。

トマトジュースと云う名の血を吐く私は、
ごっこ遊びじゃなくなる日を夢見て生きる。

生きている。

空はどこまでも蒼くて、つくづくこの世が嫌に成る。

生と死のメビウスにはまり込んだ私は
もうここから逃げられやしないの。


自由詩 トマトジュース Copyright 朽木 裕 2006-12-19 22:59:20
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