あるところに
水在らあらあ





あるところに男と女がいて
であって 好きあって
子供ができて 家庭を持った

あるところにできた二人の家庭は
明るい家庭で
子供は二人
跳ねて 飛んで

子供の頃によく行っていた
なかがみ公園が
駐車場になっていたよ
CUBEとかいう車が
青空を否定していたよ

あるところに男と女がいて
男は素潜りが得意で
家族で海に行っても
帰ってこなかった
何時間も
心配してふるえている
ビキニのあなたを
今も覚えている

女は看護婦で
子供のたいていの病気は
家でなおった
誇らしかった
愛情を感じた

子供が14歳のときに大きな家に引越して
大きな家はホテルで
一部屋ずつ電話があってそれでも
喜びも悲しみも音信不通になった

あるところ、それは日本で、
あるところ、それは都会で、
あるところ、それは泡で、
あるところ、それは夢で、
嘘で、希望で、輝いて、凍えて

あるところに男と女がいて
女は子供の鼻が折れたときに入院していて
病院の白い蛍光灯の下を
ワルツを踊りながら
近づいてくるあなたはきれいで

引越す前の家に行ってみたよ
幼馴染に会った飲み屋の帰りさ
あなたの植えた玄関前の金木犀は
まだあったよ
まだ
あたたかかったよ

あるところに男と女がいて
であって 好きあったのに
男は海を捨てて 家庭を捨てて
銀色の玉を追いかけて ホタルの光にやられて
女は子供たちの弁当箱に
絶望に限りなく似た愛情を
詰めれるだけ詰めて

であって 好きあったのに
であって 好きあったのに
であって ぼくらが生まれたのに
であって ぼくらは 生まれたのに

あるところに男と女がいて
男は仕事にやられて
女も仕事にやられて
社会にやられて
時代にやられて
やられちまうその過程で
ぼくらは生まれて

昼寝と酒と恋愛だけあればいい
そう次男は思って
家を捨てて
国を捨てて
遠い国で
緑色の目をした
やさしさを見つけて

怖いよ
怖いよ
あるところが

怖いよ
怖いんだ
あるところが
ここまでやってきそうで

あるところに男と女がいて
であって 好きあって
子供ができて 家庭を持った
世界は美しくて
輝きに満ちて















自由詩 あるところに Copyright 水在らあらあ 2006-12-19 18:15:01
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