恋人とのわかれ
吉田ぐんじょう


どんなに長く電子メールを送信しても
恋人は七文字程度しか
返信してくれないのである
業を煮やしてメールを送信するのを止めると
次の日から
矢文が届くようになった
頬を掠めてすこん
何処にいてもすこん
と傍らに刺さってくるのである
一体
何処から射出しているのだろうか

中身は
相変わらず七文字程度しか書かれていないが
愛されているのだと
慄然とする


恋人が米を炊いた
と言うので見に行ったら
炊飯器の中に
大量のしらすが入って
ほこほこしていた
こらっ
と叱咤すると
首をすくめて
床の上に平たくなってしまった


恋人は何時も
塩あめを舐めている
そうして硝子じみたそれを
舌で色々な形に細工して吐き出す
服の釦が取れたときなどは
本当に便利だ
二つ穴でも四つ穴でもカフスでも
きちんきちんと作ってくれる
ただ難点は
少しべたべたするところである


恋人が最近
唸るようになった
威嚇するように
ううううと唸る
放っておいたら
或る日の真夜中
みるみるうちに湾曲して
犬のような獣になって
走り去ってしまった

あとには水晶体のように
まるくなった塩あめだけが
残されて

口に含んで
舐めてみたが
存外さみしい味のあめである
そんなにさみしかったなら
言ってくれればよかったものを



自由詩 恋人とのわかれ Copyright 吉田ぐんじょう 2006-12-19 16:15:43
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