鰯の話と神さんと
六一介

空をけずるおとのする 大風のよる
ふたりで二尾百円の鰯をたべる

おさないりーちゃんのいうことには
こんな風 神サンのおうち とばへんやろか

ピンクの箸で鰯の肉を運ぶ
りーちゃんの「神サン」はその手のように 
ちいさくまるく あたたかい

わたしの神は 猫背の七三分けで
しじゅう株価と為替を気にしている

わたしは鰯の骨をとる
家が飛んだら神サン うちにきてもろたらええな という
このあいらしく やわらかいくちびるに
骨のたたぬよう

鰯の肉をりーちゃんの皿に取り分けながら
噛み砕いた肉と骨を むん と呑む


自由詩 鰯の話と神さんと Copyright 六一介 2006-12-17 19:45:05
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