羽根のある庭
かぜきり

いつもの学校 深い夜染みた校庭にて

人影はふたつ
月影はひとつ

答えに問うは羽根の無いほう
問いに答うは羽根の在るほう

そう

片方には在るんだ
片方には無いんだ

そして 

問うているのは無いほうで(羽根は生えている)
答へているのは在るほうで(羽根はもともと無いぞ)

深夜の校庭 浅い闇の溜まる場所

蒼さ積もった 不在の庭で

明かり色の羽根巨大に広がり
鏡色の輝きとても綺麗な白銀
意味無くとも広がり続ける広大な

ただその翼だけ
翼だけが儚くうきあがる四角い場所で

学校の制服だろうか よくみる絵姿を纏い
二人は話していた 対比すれば白と黒もしくは浅薄灰と灰

どちらがどちらか

二人の話している内容はここには届いてこない
周囲を取り巻く風だけがその言葉をつないでいるようにみえる

答えている方は椅子に座っている
尋ねている方は椅子に立っている

校庭は静まり返っていて
たまに小さな羽音が聞こえる
話し声が聴こえてこない
二人は本当に話しているのだろうかと
怪訝さは反響してきた蒼のせいか

座っているほうが
立っているほうの

足首を握っているのが見える
たまの突風は二人を一人にしている
大きな羽音にどちらかが顔を歪める

少しの間
雲の群れが流れてきて
月明かりは途切れていた

いよっと。
ああ、ちょっと疲れたので
小 休 止/

そんな間にも二人の問答は続いているのだろう
月影が薄くなると実はあの場所にいるのが
二人だけではないことが見て取れるのだが

私は小休止しているのでそんなことは
わかりはしない
見えていないことを知っているわけが・・・

ふぅ。

さて/

月影がもどり
二人がまた二人となって
どうやら二人の
掛け合いは終わらない

月はいつまでも表に無く
陽光の裏での翼はどうするのだろうか
のんびりともどってきているのは
このような

答えている方は立ち上がっていた
尋ねている方は座っていた

椅子はそのままで
二人は
少し翼の方に目をやって

流れる空気は 

そろそろ色を潰す色がさが滲んでいる
誰にでも届くこの色は
夜の終わりに届くこの色は

どれだけなのか
やがてぞろりとつれてきゆ

互いに互いをひきながら

翼だけがそのままに

よくある風景のこの校庭で
二脚の椅子の片方の

上空へと大きく広がった

この翼だけが
このままに
羽ばたきを続ている


自由詩 羽根のある庭 Copyright かぜきり 2006-12-15 22:26:15
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