悦楽(黒薔薇の微笑 其の二)
恋月 ぴの

胸のボタンを外すとき
あなたの狡猾な指先を思い出す
背後から不器用そうに
それでいて
未来に待ち受けているものを欺くかのように
(それなのに忘れられないのは
部屋の灯りを消しても
情念の炎を消し去ることなんて出来ない
露わになった鳩尾あたりに
感じてしまう生きていることへの証し
あなたの粘膜と
わたしの粘膜
(あれは幻影だったのかしら
全てがそうであるなら
あなたの温もりと
わたしの途惑い
白夜に浮かぶ熱気球のように
苦しげに熱い何かを吐き出しながら
あなたの指先の趣く侭に
あなたの意志に操られる侭に
行き着く当てもなく彷徨うばかりで
外したボタンの奥に潜む
わたしという人間の本性が曝け出されて
待つおんなの美徳らしさと
薄化粧の操り人形
ひとり芝居の恋に堕つ



自由詩 悦楽(黒薔薇の微笑 其の二) Copyright 恋月 ぴの 2006-12-14 22:55:22縦
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