マリンちゃんは夕べ
しゃしゃり

ジョニーの腹違いのいもうと
マリンちゃんは夕べ
バスを待っていた
最終バスだ
零時二十五分
かけおちするのさ
あのどうしようもない男と


天気予報では
急に寒くなって雪だといった
マリンちゃんはお兄ちゃんに伝えてほしいと
俺に電話をくれたのさ


川沿いの刑務所まえ
バス停にはこわれたベンチ
俺はジョニーにはだまって
マリンちゃんを見送りに行ったのさ
マリンちゃんの好きなたこ焼きを持って
あったかいうち食べなよって

マリンちゃん
やっと笑ってくれたさ
たったの一秒でも
俺には永遠のような気がしたさ


雪が降ってきて
俺とマリンちゃんは
何も話さず
やってくるバスを見送っていたさ
乗る人
降りる人
回送バスの途方もないさびしい灯り


マリンちゃん
なんで
なんで
あんな野郎が好きなのさ
俺にはけっして吐けないセリフを
そいつが言っただけなのだろうか
ずるいやつだそいつは
でも
ずるいところからしか
届かない言葉もあるのかもしれなかった


やがて雪が降ってきて
マリンちゃんの手袋に
吐く息も白く
俺は


ごめんね
ひとりでいたい
午前零時二十五分の最終バスに
野郎はやってこなかった
携帯は電波の届かないどこか


マリンちゃんは夕べ
バスを待っていた
最終バスだ
零時二十五分


俺はひとりで帰ったのさ
屋台のおでんをお土産に
何も知らない
ジョニーと飲んださ






自由詩 マリンちゃんは夕べ Copyright しゃしゃり 2006-12-14 20:11:26
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