青銅の蛇
アハウ

青く煙る 夕暮れ
窓から 黄昏の気息 忍び寄り
一人 聖書よむ 我
ロザリオ握り締め ラテンの呪文など唱え
夕焼けの紅 粗末な卓にかかり 青く遠く 紅 近く
偉大な日没を見入る もう夕べの祈りの時間
闇が音もなく滑るようにやってきて
このあたりもどっぷり闇につかる
燭台に焔ともし 十字架の前に跪き

夕べの祈り始めたり 祈り始めたり

すると 疾風 読み止しの本のページをめくり
雷鳴とどろき 黒雲あらわれ 驟雨 木々を濡らす
さらにさらに雷鳴近づき 
空気を震わし 風 逆巻き落雷する

ひるまず祈り続ける 我
続けざまに落雷する 雨脚ますます強く
窓際の床が濡れ始める
祈りの背後から気配がしている
その場の空間が気で歪み始めている
不協和音の連続のような感覚
異空間を通過しているような
切迫感をともなった 荘厳な重々しさがやって来た
 
祈りを中断 背後の窓を閉めようと振り向くと
窓から 立ち木伝いに 
青銅の色した身の丈ほどの蛇
激しく雨に打たれ 
そのなめし皮の鈍い光の肌 ますます光り
体半分 部屋に入っている
稲光がその体の影を大きく映し出す
ゆっくりゆっくり空間を歪め
まるで王のような優雅な面持ちで
体はもう部屋に入りきった
ドサッ 
窓枠から彼が床に落ちた音がする

青く鈍く稲光を照り返す 青銅の蛇
思惑ありげに その赤き舌 伸ばし
何かの 間合いを 計るごとく
音もなく ゆっくり ゆっくり 
その体よじらせ蛇行しながら 前へ進む
規則正しい宇宙のリズムをその身に宿す
その知恵で星と星の出会いの手助けし
ヘルメスの杖に巻きつく二匹の蛇は二重螺旋
明と暗 昼と夜とを統合する象徴の図柄で表され
自らの尾を噛むウロボスは永劫回帰表している
第三の眼に関わるクンダリニーは尾てい骨にとぐろを巻く

あらゆる良き知らせ青銅の蛇は


自由詩 青銅の蛇 Copyright アハウ 2006-12-14 08:02:31
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