ラブソング/トタンに雨が踊り狂ってしまって
nm6

きっとこれはライグレと煙草で
味とも匂いともつかない艶めきが乗りかかる部屋に
トタンに雨が踊り狂ってしまって 音楽のほうが薄っぺらで

勢いあまって気が違ったか なだれかかり
この季節の 凡庸なひとびとに崇められた
ソメイヨシノは うれしそうに散ってゆきます
調子よく うれしそうに



そういえば ぼくも気がつけば
いつか消えることを言い続けてきたのでした
圧倒的なものに 予防線をはるのです
同じく ポーズを取ることに長けていますから

フェードしそうな印象は ひとつの大きな嘘のかたまりで
明日のことはわかりませんし このまま解かないかもしれません
クスリにするのは浅はかですから とりあえず
ちょっと溶けたいそのときに 痕にころげる夢にします
このまましばらくは 演じさせてあげましょう



ところで
いつかしまいこんだ箱は
開けたとたんに溺れるほどに流れ出す起伏で
平坦な演算と決め込んだ 日々がただれていきます

見渡した鳥が
蟻の位置から 森を仰ぐようになりました
ありがとう と ばかやろう が混ざっていますが

大切にするべくは
味とも匂いともつかない艶めきが乗りかかる部屋に
浮かんだり溶けたり揺らいだりするそれ自体だと思い出します
トタンに踊り狂う雨もやみ 薄っぺらな音楽をかけて
やがてぼくらは日々に帰り ざわめきのひとつひとつを読んで
この手で 明日も変わってゆくことを愛でましょう
ありのままの世界の大きさと つまづき続ける自分とを
まったくたよりない点線でつないで てくてく歩いてゆくのです


自由詩 ラブソング/トタンに雨が踊り狂ってしまって Copyright nm6 2004-03-31 12:08:43
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