『発話するレインコート』
しめじ
届いた声はすでに枯れていて
爪弾いた細い月を眺めながら
君は遠い空へふっと息を吐く
羊雲を産卵して
吐息は青
ショットグラス傾けろ
乱暴なサクソフォン
蹴飛ばしたこうもり傘にナミダ
手品じみた花びらが舞うので
その一枚一枚を
記憶して名前をつけるのだ
雨で墜落する
千花という花びらを
夕食に招いて
一緒に大蒜を刻んでみる
水に映る口元に笑み
フォークの先を静かに舐める
鳥居に吊るされた少女が歌う
コーヒー豆が高騰した
そんな昔の思い出話
歩きつかれたカンザシ
抱いたまま眠る雨降り前夜祭
か細い声よ
伝わる前に消えろ