空洞軌
木立 悟


錆びた鉄柱が立っている
裂けめは花に覆われている
雲ひとつない空
掴むところのない空


川沿いの砂利道は
小刻みな縦揺れ
見向きもしない水鳥


呼ぶ声に顔を上げると
声はどこかへ飛び去っている
かごの上には砂ぼこり


ふたつの大きな翼の影が
空と川にひらいては消える
少しだけ濃い青のかたち


午後の空気に生まれる水
風の洞を過ぎてゆく
白から先に灰へ 灰から先に銀へ


空の少ない空の下
みんな急いで駆けてゆく
軒先に揺れる人形
雨を見つめる人形


空を横切るものの影と
空を見上げるものの影
貫くようにとどろくはばたき


映すものなくかがやく道
色と姿をはじく道
うつろな風の行方を昇り
鉄の響きを撒いてゆく
花の響きを撒いてゆく




自由詩 空洞軌 Copyright 木立 悟 2004-03-31 07:52:56
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