お父さんの車は私の知らない場所に走っていく
ki

私が昨夜、落としたビーズ瓶を踏みつけて
粉々になったのを
太陽から泳いできた魚たちが食べる

お父さんは
ここらでいいだろうと
トランクから釣竿を2本取り出して
私たちは釣りを始めた
釣り上げた魚は
なくしたおもちゃの指輪や
お母さんの片方だけある真珠のイヤリングをしていて
お父さんは大量だと笑って
私の左耳にイヤリングをつけた



ラジオはいつのまにか静かな波音
暗くて冷たい水が耳を塞ぐ
オレンジ色に光る瞳がこわい
お父さんがあれはオレンジだよと
ひとつもいでくれた
きれいなオレンジ色したビー玉
今でも持ってる



こわごわ手を伸ばす
オレンジ色したまんまるい瞳に
私が逆さに映る
しゅんかん
手をはなした
窓を開けて後ろを見ると
水音の隙間に
きれいな歌声
あれはずっと友達になりたかった
同じクラスのおんなのこ
私もその歌しってるよ



赤と青が混ざり合う空
工作の時間に私が作ったきれいな色
お父さんの車は
軽やかに波を撫ぜていく
きらきらの海は空まで広がって
私が落としたビーズの欠片は家まで続いて

夜はこんなにも明るい


自由詩 お父さんの車は私の知らない場所に走っていく Copyright ki 2006-12-12 16:55:53
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