お父さんの車は私の知らない場所に走っていく
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私が昨夜、落としたビーズ瓶を踏みつけて
粉々になったのを
太陽から泳いできた魚たちが食べる
お父さんは
ここらでいいだろうと
トランクから釣竿を2本取り出して
私たちは釣りを始めた
釣り上げた魚は
なくしたおもちゃの指輪や
お母さんの片方だけある真珠のイヤリングをしていて
お父さんは大量だと笑って
私の左耳にイヤリングをつけた
○
ラジオはいつのまにか静かな波音
暗くて冷たい水が耳を塞ぐ
オレンジ色に光る瞳がこわい
お父さんがあれはオレンジだよと
ひとつもいでくれた
きれいなオレンジ色したビー玉
今でも持ってる
○
こわごわ手を伸ばす
オレンジ色したまんまるい瞳に
私が逆さに映る
しゅんかん
手をはなした
窓を開けて後ろを見ると
水音の隙間に
きれいな歌声
あれはずっと友達になりたかった
同じクラスのおんなのこ
私もその歌しってるよ
○
赤と青が混ざり合う空
工作の時間に私が作ったきれいな色
お父さんの車は
軽やかに波を撫ぜていく
きらきらの海は空まで広がって
私が落としたビーズの欠片は家まで続いて
夜はこんなにも明るい