耳鳴り
わら

あの日から、
耳鳴りが やまないんだ


いろんな場所が、
いろんなものが、
こわくなっていったんだ

その場所も、
ほんとは、そのひとつだったんだ

それでも、
なにかを ふりきるように、

なにかに むかいあうように、

その日も、その場所にむかったんだ




その日も、雨のふる夜だった

その日も、なぜか、土曜日だった


そして、また、
そんなものに 出会ったんだ












夢をみた

きらきら ひかる

夢をみた




その光景のせいじゃない

その場所のせいじゃない

まばゆい照明のせいでもない

からまりあった
4つの人間の影でもない


思いかえせば
その「時」へ むかって
静かな加速をしていたのかもしれない



音は 聞こえなくなっていた


ことばは みつからなくなっていた


ずっと 宙を見上げていた







哀しみは 空を 翔ぶ・・・



















夢をみた


羽が はえていた



でも、それ以外は 妙にリアルだった



夜、近くの町で、
一番、高さのありそうな
市営住宅のマンションをみつけ、

おそる、おそる、
屋上にまで ゆき、

フェンスをのり越え、

ていねいに、靴をそろえていた


下に 誰もいないことを確認し、

その先に 立っていた



きらきらひかる 街をながめ、

やっと、流せた キレイな涙を感じ、



そっと、ほほえんでいた


そして、

目をつぶり・・・














だけど、
夢の中では、 羽がはえていた

望んだ世界へ ゆけるのだと、
信じていたのかもしれない

すべてから、解き放たれるのだと













神様のいたずらか


おれでも、書けるような三文芝居のシナリオを、

偶然か、 なんなのか、

なぜか、おれは、踊らされている


ピエロみたいな このおれには、
手足から 細い糸が、
つりあがっているかのようにさえ思える

そのうち、
糸ももつれ、くしゃくしゃに。

動けなくなってしまうのかな?



ドラマチックに 生きている?

いや、
ドラマチックに 死にむかっている?



安っぽいなあ



デキすぎてて、
むしろ、 笑けてくるから、

その気があるなら、
さっさと、 殺してくれ










わらをも つかむかのようにして、

詩に 「生」を、すがるほど、

もう、うなだれつづけてきたんだ


そして、結局、

コトバなんて、 みつからなくなる


ゆれつづけてきたことも、
罪かもしれない。


コトバにせずに、
ひとり、のみこまなきゃならなかったのか?

たとえ、詩にさえも。


「こたえ」は、
そういうことかい?













あい って、なんだよ?

おれは、 「あい」に さまよいつづける























ながい眠りから、
目が覚めた。

目覚めたときには、
もう、夕暮れだった。

雨が すこし、ふっていた

耳鳴りが まだ、していた







すべては 終わるさ


すべては、その場、
その絵に、
おさめられたようだった





そして、
あの場所も


高架下、
ガラクタ置き場みたいなライブハウスは、
もう、今月で、
閉まっちまうらしい

あの冬、
耳鳴りのはじまった、
あの場所までも



だけど・・・










あの光景は、

死ぬまで忘れない











それは、なぜか、

うつくしかったんだ





















































自由詩 耳鳴り Copyright わら 2006-12-11 16:32:59
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