戦慄!怪人キキョウ男の野望(Mr.チャボ、戦士の休息)
角田寿星


 謹啓 Mr.チャボ様
 当フラワー団は本年九月の
 一日から末日まで
 「秋の七草キャンペーン」を開催いたします
 つきましては誠に勝手ながら
 キャンペーン期間中 貴方様への攻撃を
 自粛させていただくことと致しました
 ここに謹んで ご連絡申し上げます

     秋の七草キャンペーン事務局長
     フラワー団幹部
               怪人キキョウ男

几帳面な文字で投函されたハガキを
ほそながい朝の光のなかで読んでいる
低血圧ぎみで事態の理解に少々時間を要したが
これは つまり

「放置プレイだね」

窓の外でむくどりがぎいぎい鳴いてやかましい
ノラ猫の小谷少年がむくどりを狙って
さらに返す刃で 永遠の宿敵である
ミニチュアダックスのブルさんと応酬してる
そんな声をかき消すように
クラクション 踏切の音 やがて
警笛を鳴らしながら私鉄列車が走り去っていく
テーブルの目覚ましがかたかた揺れている

ぼくは思い描く
人のまばらな駅前の商店街
スーパーが撤退した名ばかりの駅ビル
がらんとしたホールに折り畳みテーブルを並べて
怪人キキョウ男が肩ひじをついている
そろいのTシャツを身にまとって
きっと「秋の七草クイーズ!」とかやってんだろう

キキョウ ハギ ススキ ナデシコ オミナエシ
クズ フジバカマ…うん ぜんぶ言えた

日当たりが充分でないぼくの部屋で
ほそながいぼくの朝がゆっくりと過ぎていく
開店時間になったら
枯木も山のにぎわいだから
毎日見物に行ってあげよう
とひそかに思う


自由詩 戦慄!怪人キキョウ男の野望(Mr.チャボ、戦士の休息) Copyright 角田寿星 2006-12-09 02:06:48
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