残された子達
eris

お母さんが出て行った
僕もお父さんも
泣いて 泣いた
ただ
まだ幼い弟は 何も知らず笑ってた

弟が「ママは?」って聞くたび
お父さんは泣きそうな顔をして
僕は聞こえないふりをする

そして お父さんは弟に嘘をついた
「お母さんはもうすぐ帰ってくるよ」

その日から
弟は玄関で遊ぶようになって
ドアが開くたびに
「ママ」って叫んだ

そんな弟を見て 僕は思ったんだ

お母さんが帰ってこない事を知っている僕
お母さんが帰ってこない事を知らない弟
どっちが つらいのかな?

無性に泣きたくなって
弟を強く抱きしめた
そうするとまた 弟が僕に聞くんだ
「ママはいつ帰ってくるの?」

溢れ出しそうな涙堪えて 精一杯の優しい笑顔で
「いい子にしてれば帰ってくる。
 だから いい子でママを待ってよう」

今度は 僕が嘘をつく
弟が知るその時まで・・・


自由詩 残された子達 Copyright eris 2006-12-08 21:50:09
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