内科 小児科 産婦人科
たちばなまこと

きみが生まれた病院へゆこう
インフルエンザの季節だから
まだ赤い きみのBCGみたいに
痛い注射を刺されにゆこう
歯の無いきみの笑い顔を抱っこして
きみを産んだ病院へゆこう

晴れて乾いた土曜日だね
きみが生まれたあの夏の日には
真っ暗な夕立にあったけれど
ちょっとだけ懐かしいね
おなかをさすりながらくぐってた入口
ほら おくるみを覗き込んでる女の人は
まだまだおなかに栄養が入ってる
ママもあんなおなかだったのよ

この病院の右側じゃ私たちはスター
さあコートを脱いで 羨望のまなざしがあつい
生まれてくる子みんながみんな
「きみみたいにかわいいとは限らないのさ」って
パパもよく言うよね
「そうなんだよね」って
言っちゃうママも親ばかなのさ

先週きみを診てくれた 女の先生もいるかな
今日も左側にゆくけれど もうひとつ左側
痛くってもママは泣かなかったよ
結構強い方なのよ

ほら 隣に座る女の人みたいに
まめ粒だったきみの写真 焦げるくらいに見つめてたのよ
ほら 後ろに座る女の人みたいに
生まれたらあんなだろうなって
私たちみたいな人を ずっとにんまり見てたのよ
「んげー」って笑い声を 会計ロビーにふりまいて
新しくパパとママになる人たちの
不安をしゃぼんにしちゃおうね

右側の奥 隠れ家みたいなベビークリニック
「おっぱい出させてくださいな」
ノックをしても誰もいない
ぬくもりの気配だけが残る部屋
沈みかけた光が きみの涙のまつ毛におちる
「あったかい病院もあるんだね」って
きみのおでこにキスをする


自由詩 内科 小児科 産婦人科 Copyright たちばなまこと 2006-12-08 21:09:16
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