小箱のなかで(三)
青色銀河団
記憶の ぬくもりが
朝のラインに 並びます
いくつかは やわらかく はじらい
いくつかは つめたく ゆるされて
/濡れた空に 水の旗が ゆるやかに たなびいています/
それでも紙の野原で
濡れた空がひらかれたとき
雨の日のむかしまで
潮は満ちてゆきました
(それは小箱のなかのうつくしい鏡の海のこと)
紙の野原でひらかれた空が
朝の光に濡れています
音の郵便は
誰もいない朝のランプにとどきます
北風が笑いました
/響きのうつくしい
紙の野原でひらかれた空の
故郷のまわりをとぶための白いほのお/
光に濡れた
うつくしい響きのガラスの果実は
紙の野原で
練習帳をひらきます
朝のラインにそって
風をまなぶための
一冊の文法のノート
(それは小箱のなかのうつくしい霧の朝)
むかし雨の日に
海まで歩きました
一冊の文法のノートを携えて
(潮はどこまでもどこまでもあおく満ちていきました)
風が止みました
音の郵便は
誰もいない蛍光ランプまで
もう届きません
美しいひびきは
どこかしら
母に似ていたようです