小箱のなかで(三)
青色銀河団

記憶の ぬくもりが
朝のラインに 並びます
いくつかは やわらかく はじらい
いくつかは つめたく ゆるされて

/濡れた空に 水の旗が ゆるやかに たなびいています/



それでも紙の野原で
濡れた空がひらかれたとき
雨の日のむかしまで
潮は満ちてゆきました


(それは小箱のなかのうつくしい鏡の海のこと)






紙の野原でひらかれた空が
朝の光に濡れています

音の郵便は
誰もいない朝のランプにとどきます
北風が笑いました



/響きのうつくしい
 紙の野原でひらかれた空の
 故郷のまわりをとぶための白いほのお/


光に濡れた
うつくしい響きのガラスの果実は
紙の野原で
練習帳をひらきます

朝のラインにそって
風をまなぶための
一冊の文法のノート


(それは小箱のなかのうつくしい霧の朝)







むかし雨の日に
海まで歩きました

一冊の文法のノートを携えて

(潮はどこまでもどこまでもあおく満ちていきました)





風が止みました
音の郵便は
誰もいない蛍光ランプまで
もう届きません




美しいひびきは
どこかしら
母に似ていたようです





自由詩 小箱のなかで(三) Copyright 青色銀河団 2006-12-08 01:04:50
notebook Home 戻る