spring
umineko
あたりまえの生活というものがよくわからない
平日のお昼時に街に立つ
オフィスから吐き出された人々は
中也の作品に、嗚呼サイレンだサイレンだ、といったのが
あった気がするそれに近い
ぞろぞろと
ぞろぞろと男と女
紺色のスーツは太陽が嫌い
コンビニのレジに紺色が並ぶ
信号を待って紺色が揺れる
半透明なビニール袋が
孤独の代わりに挨拶をする
私は反対の方角へ
強い足取りで歩を進める
うつむく人怖がる人目を逸らす人
携帯をかざした人たちだけが
笑顔にも似た唇で
誰かに認めて欲しいから
恋をするのは
それは
嘘
私は
誰よりも
私が好きだから
おんぼろなエンジンで
うまくは走れないけれど
それでもいとおしい
ノイズのように
何人もの人が
あなたを好きだろう
私は後ろ手の
花束さえも渡せずに
おめでとうって それ
誰に言った
強い足取りで
あなたを好きだった
そのことだけが私の支え
だから
負けるはずもない
春はもうすぐ