色街幻想
月夜野

  五月の青い闇の中
  私はか細い少年になり
  夢の迷路へ踏み入った


  白いうなじに風を受け
  はだしの足で土を蹴り
  煙る街灯はすに見て
  ネオン流れる色街へ


  着いた路地にはカツカツと
  商売女の靴の音
  闇に隠れて覗き見る
  色めく世界の艶やかさ


   (おいでな坊や 姐さんの
    胸の谷間でお休みよ)


  はだけた胸のその奥に
  うつろな深い洞があり
  寂しい鳥がその中で
  切ない歌をうたってた


  街の果てには黒運河
  水面に消える淡い夢
  佇む老いた船乗りの
  背中に落ちる時の砂


  五月の青い闇つきて
  夢の迷路を後にした
  連れて帰った寂しい鳥は
  いまも私の胸でうたってる





自由詩 色街幻想 Copyright 月夜野 2006-12-07 22:59:39
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