eclipse *
岡部淳太郎

欠けている
それだけで思い悩む
砂のようないのち
たとえば
ふたつの石を打ち合わせて
火をつくる
そのために
石が欠けたとしても
かまわずに石を打つ
ただ
火をつくる
それだけのために
あるいは
むしられて
切り刻まれた
記憶のために
おびえて
埋められない穴に水を流しこむ
月の優しさからも
太陽の強さからも
へだたって
欠けている
そのことが
はたして 勇気と呼べるか
ひとり屈んで
(太古の人のように)
大地の産毛をぬく
自らがこんなにも欠けているのだから
こいつらもみな
欠けさせてやろうとばかりに
傍らのいのちを傷つける
あれからどれだけの
時が過ぎ去ったのか
昼も 夜も
それぞれに欠けたままで
それのみで
時を満たすことはない
いまもこうして
欠けたままで
さらに蝕まれている



(二〇〇六年九月)


自由詩 eclipse * Copyright 岡部淳太郎 2006-12-07 22:13:18
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