四行連詩 独吟 <模様>の巻
塔野夏子

*四行連詩作法(木島始氏による)
1.先行四行詩の第三行目の語か句をとり、その同義語(同義句)か、あるいは反義語(反義句)を自作四行詩の第三行目に入れること。
2.先行四行詩の第四行目の語か句をとり、その語か句を、自作四行詩の第一行目に入れること。
(この1か2の規則を守って連詩がつづけられる場合、最初にえらばれた鍵となる語か句が再び用いられた場合、連詩が一回りしたとみなして、終結とし、その連詩の一回りの題名とすることができる)



事象と意識との界面に
華奢な破綻がひびを入れてゆく
それが美しい模様になりはせぬかと
見つめている私がいる

     *

冬の夕暮れの原だった
青い雲が 薄いグレイの空に
大きな花模様を描いていた
去りゆく人のための書き割りのように

     *

書き割りは 黒い幕の後ろで
待ち続けている いつかはじまる
一度きりの夢のような芝居のために
世界を抱いて 守りつづけている

     *

世界の向こう側 濃紺の宙の彼方
なかば透きとおるように 仄かに青く浮かぶのは
はるか未来に 僕らが生まれた都市
そしてその上を しずかにめぐる散開星団

     *

いくつものビルディングから
窓たちが次々と身投げする
そのあとを追うように 過去の記録たちが
街路に暗い雨のように降りそそぐ

     *

暗いカタログを繰る指の気配
を感ずるごとに脳裏に明滅する
“Anywhere out of the world”
深淵で薔薇と棘とが微笑んでいる

     *

深みに睡る空が
ゆっくりと目をひらく
翼の模様にふちどられた便箋に
綴られた手紙を読むために





自由詩 四行連詩 独吟 <模様>の巻 Copyright 塔野夏子 2006-12-05 21:54:45
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
四行連詩 独吟