勤労感謝の日
あおば

勤労感謝の日の昼下がり
今年も晴れているから
散歩に行かなくてはならない

木枯らしの吹く前にと
慌ただしく一年分の
犬の散歩する人の群が
通学路の小径を占拠して
昨日の午後
学校帰りの少女が踏みしめて
大人しくなった落ち葉を
乱暴に散らかしてゆく

集めて燃やしている光景を見る
火炙りの処刑か火葬しているのか
どちらとも思える光景を写真に撮る
白い煙は右の方へ35度の角度を保ち
直線的に流れ
裸になった桜の枝にしつこく絡みつき
諦めたように上方に拡散していく

西の方を見たら
午後の斜陽は色づいた桜の葉を
ステンドグラスのように輝かせ
半年遅れの花見を演出している
臨死の花園に似て美しすぎる
なに、木々の
死に装束だと言うのは容易い

風もないのに絶え間なく
黄色くなって落ちる葉の
落下速度を測ってみたら
意外なほどのスピードで
シャッターが落ちる一瞬の後には
静かに地に横たわっている

今日は国民の祝日だから
踏みしめて引導を渡す役の
学校帰りの子供達の姿は
何処にも見えなかったが
休日だというのに
晩秋の午後は
忙しく歩いていく




2001/11/23


自由詩 勤労感謝の日 Copyright あおば 2006-12-05 01:24:19
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