真紅

 最初の日曜日、世界は混沌とした闇の中にあって、まだ私の手の届く範囲内でした。

 最初の夏、世界は混沌とした闇の中にあって、私はその世界で王様でした。

 最初の冬、混沌とした世界は終わりを告げ、色濃い世界に私は旅立った。

 混沌とした世界はとても暗く、とても狭かったけれど、それを補うだけの暖かさを持っていたのです。

 色濃い世界は、私に追い風と向かい風をたくみに与え、私の足音を操ります。

 厳しい風です。刺すように冷たい風です。

 でもコートを羽織ればなんとかなりそうです。

 私はこの風を利用して、色濃い世界の全てを見ようと思います。

「気をつけて」と手を振る人はいません。

 私は旅立つことを告げていないのですから。

 でも心配なさらないでください。

 必ず帰ってきますから。

 出掛けた時と同じコートで。

 同じ赤い靴で。

 少し伸びた背丈で。


自由詩Copyright 真紅 2006-12-04 23:21:23
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