暁星
渡辺亘

みなし子にかける言葉があるか
みなし子に
かける言葉はあるか

霧のような冷たい雨が降る日
孤独と不信に凝り固まった心を持つ子
その子の瞳は何も知らない

知らないけど知っている
日本に原爆が落ちたこと
中国や朝鮮半島などで非道いことをしたこと
大人たちは子供に
何も伝えていない
伝えない無慈悲がこの子を生んだ
伝えてくれない孤独がこの子を生んだ
反省しない卑しさがこの子を傷つけた
命への不真面目さがこの子を悲しませた
テレビは楽しいことがいっぱい流れるけど
何もこの子のたましいを満たしはしない
みんなこの子から奪っていく
一番弱いこの子から奪っていく

命を満たす愛情も知らずに
この子はどこへ行くのだろう
宇宙と鼓動をあわせることも知らずに
ここから先は修羅の道
誰も何も教えてくれない
自分で道を求めるしかない

駆けよ
みなし子よ
新しい哲学というたいまつを持って
時代の先駆けとなれ
悲しい涙をのんだ君こそが
時代を変える申し子となる
その涙を忘れるな
人の苦しみを笑うことで満足する
人外の怪物となるな
命に関するあらゆる感受性をにぎりしめ
新しい時代にふさわしい新しい哲学を持て
歴史は君を待っている
君が駆けた後は
革命という言葉さえ新しい意味を持つ
革命とは
人の命の根源から浄らかにすること
命の内側から人を愛すること
その痛みを憎しみに変えず
人を愛する源とすること
君を大バカヤローだと
揶揄するものも必ず現れる
しかし君は歴史の中で
明け方に輝く暁星のような存在となるだろう
そしてその姿は
君を憎むものも愛するものも
見るものをして深い戦慄を覚えさせずにいられないだろう


自由詩 暁星 Copyright 渡辺亘 2006-12-03 02:37:49
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