世界と少女
なかがわひろか

あの娘は世界を見つけた
そこには世界が広がっていた
周りをどれだけ見渡せど
世界だけが広がっていた

縮み上がるような冷気の中で
小さな小さなこの場所から
世界を知ってしまったあの娘は
駆けていった

風も大地も空もない
ただそこには世界が広がっていた
彼女は少しだけ背伸びをして
世界を体いっぱいに吸い込んだ

世界は彼女の中で膨らんだ
世界を見つけた興奮が止まらない
彼女は精一杯
世界を吸い込もうとした

翌日彼女は死んじまった
誰にも気づかれずに
風も大地も空もない
ただただどこまでも広がる
世界の中で
ただ一人
死んでいった

(「世界と少女」)


自由詩 世界と少女 Copyright なかがわひろか 2006-12-01 23:56:54
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