矮小なヒーロー。
もののあはれ

 「お前はヒーローじゃないんだよ。」


 会社の上司によく言われる。

 芋焼酎の甘美な力を借りて。
 人生について語るとしばしば指摘を受ける。

 積極的にヒーローになろうとしてはいないが。
 まあ、なれるものならなりたいが。
 まあ、なれないけど、なりたいけど。

 兎に角、僕の持つ思想を雄弁に語り始めると。
 確実に切り崩そうとしてくる。

 ロートルボクサーのカウンターの如き老獪さで。
 僕の唇の動きをユラユラリと読み込んで。
 的確に言動をかぶせ。
 そしてヒットさせて来る。

 まあ、それはそれでいいのだが。
 まあ、良くはないのだが。

 いずれにしても3LDKに住むか4LDKに住むのか。
 そんなどうでもいい会話するよりは、人間らしいじゃないか。

 ええ、おい!

 まあ、この科白は焼酎の力を持ってしても言えないけどねー。

 へへ。

 随分と矮小なヒーローだこと。


自由詩 矮小なヒーロー。 Copyright もののあはれ 2006-12-01 17:58:52
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