いえのえ
吉田ぐんじょう
小さい頃は
家の絵ばかり描いていた
庭付き一戸建て
という物質が
人生の最終形態であると
そう思っていた
今でも
画用紙を与えられれば
わたしは庭付き一戸建ての絵を
あの頃より
ほんのすこしだけ巧く
描くだろう
中に住む人も
飼うだろう犬も居ない
無人の空き家の絵を
それはとても寒々しくて
幾らりんごの成る木を付け足したところで
なんだかまがまがしいままで
ああそうか
だからわたしはあの頃いつも
絵を描いた後に泣いたのか
顔を真っ赤にして
こぶしを握って
あんなにも
生きてゆくことが怖かったのか