いえのえ
吉田ぐんじょう

小さい頃は
家の絵ばかり描いていた
庭付き一戸建て
という物質が
人生の最終形態であると
そう思っていた

今でも
画用紙を与えられれば
わたしは庭付き一戸建ての絵を
あの頃より
ほんのすこしだけ巧く
描くだろう
中に住む人も
飼うだろう犬も居ない
無人の空き家の絵を

それはとても寒々しくて
幾らりんごの成る木を付け足したところで
なんだかまがまがしいままで

ああそうか
だからわたしはあの頃いつも
絵を描いた後に泣いたのか

顔を真っ赤にして
こぶしを握って
あんなにも
生きてゆくことが怖かったのか


自由詩 いえのえ Copyright 吉田ぐんじょう 2006-11-30 13:42:50
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