におい
恋月 ぴの

初めて彼の実家にお邪魔したとき感じた
他のひとにとっては些細なこと
それでいて我慢出来ないこと
緊張して過敏になっていた訳じゃない
踏み入れてはならないもの
その家の家族だけが安らげる
どこの家にでもある
家族が家族であることの符号
(それって犬のおしっこ?
緊張覚めやらぬまま我が家へ帰って深呼吸
胸一杯に家族の符号を吸い込んでみた
(なんだかほっとしたよ
でもね、彼の実家に足繁く通い出し
やがて彼の元に嫁いで
小さなアパートで、ふたり
おままごとみたいな新婚生活
彼の子どもを産んで
大切に育てて
年始挨拶にと久しぶりに戻った我が家
出迎えてくれた両親のあたたかな笑顔
とっても懐かしく忘れがたい
それなのに何故か感じてしまうもの
よそよそしさとは違うのだけど
(おいとましようかな
そそくさと子どもを抱えて夫のもとへ
「ただいまぁ」
散らかしっぱなしの台所
彼の無愛想な空返事に苛つきながらも
胸一杯に
家族の符号を吸い込んだ



自由詩 におい Copyright 恋月 ぴの 2006-11-29 22:16:26
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