トミノ
大覚アキラ

トミノ、
トミノ、
かわいいトミノ。
おまえの眼玉の裏側の
冷たい炎の燃えさかる
ちいさな地獄の真ん中で、
真っ朱な花がただ一輪
いまゆっくりと綻んだ。
トミノ、
トミノ、
かわいいトミノ。
啼くは小鳩か鶯か、
それとも悲しいカナリヤか。
ひとり行く身の寂しさに
零れ落ちるは村雨か、
それとも朱い血の雨か。
トミノ、
トミノ、
かわいいトミノ。
二重螺旋の梯子の上の
青い小部屋で静かに眠る、
愛しいおまえの眼玉の裏の
冷たい炎の燃えさかる
ちいさな地獄で鳥が啼く。
トミノ、
トミノ、
かわいいトミノ。


自由詩 トミノ Copyright 大覚アキラ 2006-11-29 13:50:12
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