はだかんぼう
佐野権太

山になった洗濯ものの回りで
君は
春のような
スキップを踏む
  
おうちを買わなければ、よかったね
だって、お金持ちだったんでしょ?
たた、たたん

ちいさな袖をそろえて
重ねてゆく、ぬくもり

家がないと困るのだ
寝る場所としての、家が
  
旅をすればいいんじゃない?
たたん、たたん

手をとめて
よく晴れた
窓をみつめる

旅をしていたら働けないのだ
食べるものはどうするのだ
  
きのみを、食べればいいんじゃない?
たん、たたん

軽やかな風をつむぐ君は
爪先を確かめる
頬にこぼれる髪
すくって

残念ながら
お腹がいっぱいになるほどの
木の実はないのだ
  
たねをまけばいいんじゃない?
たん、た、たん

回り込んだつもりが
いつの間にか背後に、いる
焦燥

服はどうするのだ
葉っぱの服になっても
いいというのか
  
はだかんぼうで
いいんじゃない?

はだかんぼう
はだかんぼう
みーんな、みーんな
はだかんぼう
たん、た、たん
たん、た、たん

君は
柔らかい羽根を広げて
さえずりながら
行ってしまった

置き去りの僕は
また
洗濯ものを
たたみはじめる
君のリズムで
  
たん、た、たん
たん、た、たん

そうだね
幸せのかたちは
ひとつじゃない




自由詩 はだかんぼう Copyright 佐野権太 2006-11-28 13:16:25
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
家族の肖像