漆黒の髪を愛する
銀猫


雨の糸の隙間に
夜は満ちて
ストーブの熱が
そこだけ幸福とでも言いたげに
ほんのり春を創っている

きみと並んで傘をたためば
二人の水滴は
余分な約束事のように散らばって
冷えた手のひらさえもが
春を創るように
しゃらん、と一瞬
声を上げる

雨の舗道を掻き分けた靴は
まだしばらく乾かないだろう
傘は二本並んで
しっとりと時間を分け合っている


  日増しに遠のいてゆく古いかなしみを
  思い出とも呼べず
  今もあなたと口づけたなら
  わたしはきっと泣くのだろうに
  恋には出来すぎた偶然や背伸びが
  似合っている


雨の糸の隙間で
髪は揺れて
ひそやかに濡れ
漆黒






自由詩 漆黒の髪を愛する Copyright 銀猫 2006-11-27 20:36:44縦
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