落葉の栞
服部 剛
歩き続けることに疲れた旅人
巨木の木陰に腰を下ろす
見上げた冬空の青に
突き刺さろうと伸びる枝々
北風の唄に散る
枯葉の舞
その一片は
旅人がさし出した
手のひらの上に落ち
それは
遥か遠い道程を
彷徨い歩いた旅人を
声も無く呼び寄せた巨木からの
文字の無い手紙
それは
行方も無く葉脈を辿る
人知れぬ明日への地図
( 旅人は袋から一冊の本を取り出し
( アラスカを旅する青年と原住民の老夫婦が
( 雪原のテントの内で数本の蝋燭の火を囲んでいる頁に
( 枯葉を挟んで そっと 閉じた