月のこり
船田 仰

停滞気味の睡眠欲を尻目に
ねこの声がききたいなあとおもう
あんまり飲み込みすぎているこのごろの月に
だらだらと自己申告しつづけている

どこで誰がいなくなったのかもしらずに
歩道橋にぽつぽつと雨粒がおちる
カサによってできるフィールドは
あんまり好きじゃない

電話でも玄関口でも
さよならはジーンズにはりついて離れない
願わくば素敵な言葉をつまみとって
ミジンコのようなたくましさによって満ちたい
ざわわわわわわ
フィールドはどこにでもある
あしたは六時にめざめる手筈なのに
停滞気味だなんてね
ノックアウトしたはずの悲しみを
また、思い出してしまう

トーキング
トーキング
受話器をみみにあてたなら
海のおとがただするばかりで
かけらほどのきみもいなかった
ゆうべ見た映画のはなしをしたって
一分間でノックアウトされるのは
ぼくの、ほう


とっくの昔に集めつくした
多くの象徴的な困惑ばかり見えて
歩道橋にはフィールド
そこにもここにも
トーキング、と願いつづける顔のかたまり
星のみえないここからでも
きみの影が自転車にかかるのを想像することはできる
のみこみすぎた月は消えてしまって
ぼくはただ
受話器にみみをあてて
雨がふってくることをかんがえてる
トーキング
きみのかけらを盗むために
だらだらとたれながす日常なんて
珍しくもないのに
珍しくもないのに


自由詩 月のこり Copyright 船田 仰 2004-03-27 07:24:30
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