知らないお兄さん。
もののあはれ

 子供の頃に叱られた
 知らないお兄さんの顔がまだ消えない

 蟻を踏んずけて殺してたら
 知らないお兄さんに 
 ひどく叱られた

 今度やってるところをみたら
 今度はお前に同じことをしてやる

 ものすごい恐怖だった
 何か悪いことをすると
 あのお兄さんが追いかけて来て
 ひどいことをされるという恐怖
 今で言うところのトラウマか
 もう二十年以上も経つが忘れない

 学校で習ったことはあまり覚えていないが
 あのお兄さんの顔は強く脳裏から離れない

 きっかけは恐怖であったのかもしれないが

 命を粗末にしてはならないと
 決定的に僕の心に焼き付けたのは

 教科書でも学校の先生でもテレビでも
 或いは親でもなく

 知らないお兄さんだった


自由詩 知らないお兄さん。 Copyright もののあはれ 2006-11-25 15:48:18
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