いつかギラギラしなくなる日
虹村 凌
あなたはいつも優しい眼で見ているのに
今日は何だかギラギラしているわ
帰って頂戴
と
鼓膜を突き破り脳味噌に突き立てられた言葉と
眼球を破り矢張り脳味噌に突き立てられたお前の後姿
湿気た煙草をふかして歩くこの姿はまるで
炎天下を転げ回るヨモギみたいに
街から街へ駅から駅へ
弾かれていく
水が欲しい
ミルクに氷を入れる女だった
乾燥しきった唇で愛を囁いて
舌なめずり
頭の中は君の乳首を甘く食む事で一杯で
唇は更に乾燥していく
まるで砂漠に毒々しく照りつける憎々しい太陽
眼の奥では君は既に全裸なんだぜ
それは一瞬で噛み砕かれた
遮光カーテンの隙間から差し込む光が
ベッドの上の醜い芋虫達を照らす
籠の中のハムスターが恨めしそうに見ていた
ハムスターから眼を逸らせて
次に眼が合ったのは
舌を長く伸ばして舐め上げる君の眼
即座に逸らせた眼は
天井をギラギラと輝かせる光を追って
まるで鳥が魚を捕まえるように
口から溢れて滴り落ちた
あなたはいつも優しい眼で見ているのに
今日は何だかギラギラしているわ
帰って頂戴
女は口元を拭いながらそう言うと
背を向けて二度と口を開かなかった