その雪原
こしごえ

青くかわいた微笑が枯れている
丸められた角を
階段とする
素数が熱せられながら
現象をのぼっていく

さようならは一度きりであって
すがすがしい光ならば
いつであろうともやわらかく待っているよ、と
とぎれることのない
うたを歌う空が
風に澄んでいる
夢へ漂うと
暗黒の交流の根のうえで灯る
映日果いちじくをもぎとり
落葉らくようの空中へ堕ちて
影もなくうつろに蒸散していく粒子の(風体)
青くすみわたった血を虚空に宿し
呼吸の森で無呼吸する
分解されゆく深層の時限
うかつだわ、

わたしが、ほどける。
秋の空は物悲しい
ひとのこころも染まってしまう。
気づけた安心をもって、
映日果をかじれば
青ざめた涙が、
この心臓をうち鳴らす。
冬へ降るのだ。








自由詩 その雪原 Copyright こしごえ 2006-11-25 12:07:55
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