メンデルちゃん
士狼(銀)

俺らは
先生がもうすぐパパになるなんて知らなかった
九日は先生休みで
生物の時間潰れちゃって
そしたら代理の先生が教えてくれて
どうしようもなく慌てちゃってさ
どうするどうするって
別に俺らが生むわけでもねぇのに
安産だろうか、とか
初産だったら苦しいんじゃなかったっけ、とか
男の子かな、女の子かな、とか
名前何にする、とか
だから俺らの子供じゃねぇんだって、って
でも、
なんか楽しくって
自習用に配られたプリントに名前の案出したりして
お祝い何にするーとか計画立てて
アボリジニ義久は刺激が強すぎるから
やっぱ赤ちゃん用のプレゼントがいいねって
チャイムが鳴って
金曜日になって
また先生は休みで
予定日より遅れてるって聞いて
心配になって
やっぱり自習なんてしてらんなくて
二日休みがあって

十三日に女の子が生まれました

葵ちゃん椿ちゃん楓ちゃん苺ちゃん
色々案は出たんだけど
俺らん中ではもう、随分前から呼んでたみたいに
しっくりするのがあって
やっぱ生物の先生だからね
メンデル(仮)ちゃん
先生が命名しても、
多分俺らはメンデルちゃんって呼ぶ
先生の愛はメンデルちゃんにかかりっきりで
俺らには多少冷たくなったりもしてて
でも、先生好きだからね
親馬鹿でいいんだ、先生は
先生はきっと、馬鹿親にはならないもの
どの教師も嫌いだけど
先生だけは
俺らの話ちゃんと聞いてくれるし
答えてくれるし
信頼してんだ、多分、お互い、な、先生
うん、大好きだぜ、先生

メンデルちゃん
メンデルちゃん
ちょっと小さめで生まれたメンデルちゃん
授乳中に寝ちゃうメンデルちゃん
先生譲りで天然パーマのメンデルちゃん
よく食べてよく遊んでよく眠って
いっぱい愛されて
元気に育って、
いつか俺らと遊んでください


未詩・独白 メンデルちゃん Copyright 士狼(銀) 2006-11-20 01:46:02
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