心の迷路は成長している
ぽえむ君

雨の中を
迷子の少年が傘を差さずに立っていた
誰かがそばにあったタオルを
子どもに渡してあげた

 人のタオルを勝手に使わないで!

持ち主の声がその場に響く
頭を拭き終えていない少年は
黙ったまま
だらりとタオルを下げた

少年の母親が
やっとのことで少年を見つけ出し
タオルを見ると

 こんな安いタオルで拭くなんて!

母の声がその場に響く

少年の頬には
塩辛い雫が流れていた

少年だけが気づいていた
この場所が
大きな心の迷路の中であることを
この場所で
自分が迷子になってしまったことを
そしてこの迷路は
時間とともに成長していくことを

それでも
少年は口を開くことなく
うつむいたまま
顔も拭かずに立ちすくんでいた


自由詩 心の迷路は成長している Copyright ぽえむ君 2006-11-19 22:28:08
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