afterglow
たちばなまこと

夕刻よ もっと光をください
冬の息づかいが とても つめたい
雲のミルフィーユ レースの裾に
遠い日のさくらのような
幻想の海が広がっている

雲の山 空の海ね
幼い頬のかけらが 溶かされている
私だけが知っている
海よ

抱いた寝息も 家路を歩むため息も
さびしいね さびしいね さびしいねと聴こえるような
夕刻よ
海がおちてくる

ゆかないで 体の中の
燃えているたましいの種たち
あなたの二つの水晶玉も
海の中
さびしいね
遠い日の
さくらのお水に浸されて
靴底の乾いた音にも
伸ばした袖に隠れた手にも
もっと光を
黒目に灯る炎のような
命のようなあなた

暮夜への歌を 私だけに聴こえるように
鼻先におちたさくらの雫が ほぐれてゆく歌を


自由詩 afterglow Copyright たちばなまこと 2006-11-19 13:06:16
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