十三月のヴァルカローレ
まほし
今日より、明日、明後日
舟が古びようと
櫂で水しぶきを描かずにいられない
来週より、来月、来年
からだの影が深まろうと
羅針盤の先を指差さずにいられない
蜃気楼を揺らして
永遠に届かないまま
残り少なくなる時を
「未来」 という、透明な火のような名で呼び
川風に髪をなびかせて
遠い海にとき放つヴァルカローレ
わたしという休符は
わたしでない気流に手を伸ばすことによって
はじめて呼吸に繋がる唄となり
川は終曲に近づけば近づくほど末広がり
つつまれている、河口ごと銀河につつまれている
朝に夕に
星のめぐりに
波打ちながら
流転しつづけているだろう
時に、
年の瀬せまる夜に
みずから帆となれば
冬の星座におどる白い息
をさらにつき動かす
はるかな、
おわらない
つづいていく
つづけていく