波間に漂いて
竜一郎

ラッコが羅針盤を片手に
ふらふら波間に漂っている
漣のか弱い腕に
引っ張られたりしながらも

そのうち皮膚が乾いてきて
またぞろ海に潜りはするが
寒くて浮上し日に当たる

高い波が来たときに
戯れに巻き込まれて
どこか遠くへ流された

「私は流されたのでない
 泡の真似をしていただけ」
ラッコは落ち着いた様子で証言した
どちらでも同じと隣のラッコは笑った
おまえに責任はないと教師は慰めた

ふらふら波間に漂いながら
どこに流されても文句をつけぬまま
あのラッコは運ばれていく
どの聖典にも書かれていないところへ


自由詩 波間に漂いて Copyright 竜一郎 2006-11-18 11:07:11
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