霜月
銀猫

黄昏時には不意をついて
冬が何処からか現れ
桜の枝で褐色になった枯れ葉と
わたしのこころを繋いでしまう

ポケットに入れた手が
ほんのりと寂しさに温まる頃
去年届いた便りの
名前が消えかけていることを知る

十一月には
行方知れずの恋の名残りが似合う


誕生日の近いあなたに
伝えたかったことは
陽だまりの温度や
凛と咲く冬薔薇の匂いではなく
ただ同じ風邪にわたしも悩まされていると
そんな他愛もないこと

十一月には
毛布の温もりや
朝の窓硝子の雫より
きん、と痛い闇が似合っている

闇はすっかり冬を纏っていて
重ね着したこころの奥処を
許してくれるものだ

十一月には
紅や白無垢
山茶花の散る闇
はらりと揺らぎ






自由詩 霜月 Copyright 銀猫 2006-11-17 14:49:40
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