獣の眠るかたわらで
atsuchan69

 午ちかくにもなって
太陽が燻されるように見え隠れする、
いたるところに立ちのぼる煙の墓標/廃墟となった街に
  なきさけぶ声、
 地上を這い回るかのような
低く呻く「うううう・・・・という響き
 破壊された建築物の瓦礫がおおう、無惨なかたち
人形の髪が抜け落ちて 
             つぶされた顔。
 やがて立ち上がった人の
あたかも影のような群れがあてどなく
さまよう明日に
 ただ、生きるため
――許されたのは、「獣の暮らし。

 あるいは、
偶像がふたたび生贄を求め
狂ったように貢ぎつづける
壊れた弱者どもの自動化された祈りが
「ぎゃーぎゃー
 と、虚空に木魂する


 淫婦のための紅い服を着た
首のないマネキンが飾り窓に立ち
巷に、今もなお殺戮は続けられて
 ああ!
獣の暮らしぶりといったら

 きっと今日も
誰かを犠牲にしなければならない
体液にまみれた嘔吐すべき日々が
酷く、穏やかな顔もつかの間
とっさに変わる形相/悪魔そもの/怒りもあらわに
 地上を這い回るかのような
低く呻く「うううう・・・・という響き
 ここは地獄だ、
  しかしまだ生きている

 そして生きのびた彼らから
 新しい「いのちは産まれた。 )))
 
 獣の眠るかたわらで筆をとる者がいる

 その瞳に映るのは、
一瞬にきらめく美しい光
 かぼそい「声」に似た響き
懐かしい匂いのする 穏やかなイメージ

   それは果たして
   未だ一文字も書かれていない

 詩人は
「その一瞬」を忘れられずに筆をとる

 今日も明日も
 たとえ罪にまみれ、
廃墟となった街に暮らしても
  瓦礫に埋もれて眠る日まで
            ずっとずっと










自由詩 獣の眠るかたわらで Copyright atsuchan69 2006-11-17 12:48:00
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