遠叫(TOKYO)
水在らあらあ







怖かったんだろうね
 風が死んでたりしたろうから
  ビルヂングが アロガントに まばたきもせずに
   夜空を おまえを 無視したりしてたろうから   


今日は妻が家出した記念日で
 朝からタロットの悪魔相手に
  赤ワイン 飲んでいる
   ふくろうのラベルの おもいでの


        (つらかったなあ
         おまえの幻滅の前に
         裸で 立つのは)


俺にとって
 おまえはもう
  一枚のカードだ
    伏せられたままで 涙で
      テーブルを    濡らす
        めくったら  今の生活でさえも
          おびやかすんだろう  なあ
             おまえは 津波のようだ いまも


一緒に行くつもりだったのにね
 東京に 俺は おまえを連れまわすつもりだった
  あんたにとって東京は  遠い叫びねって
   おまえが言ったときには  俺は


俺は泣いて


        (つらいんだぜ
         おまえの不在の前に
         裸で 立つのは)


もうすこしワインを注いでくれ
 そしてもう少し時間をくれ
  おまえの血 おまえの血に
   俺はまだ 酔っ払ったままだ
    それはきっと おまえも一緒さ
     うちの小さなオーブンで焼いた
      オリーブ入りのパンをちぎって
       俺が両手でちぎって なるべく痛いように


          ちぎって


だから
 怖かったんだろうね
  風が死んだりしてたろうから
   ビルヂングが アロガントに まばたきもせずに
    おまえを 夜を 見つめていたろうから おまえの切った


          キャベツの芯の そのなかで



なあ
 もうそろそろ
  おまえがあの聖水で満たされた
   噴水に飛び込んでも
    おかしくない時間だ
     俺はその底にいる
      俺はその底で
       ぬるぬるした
        やさしさのなかで



翻る おまえのスカートを見ている









自由詩 遠叫(TOKYO) Copyright 水在らあらあ 2006-11-16 07:05:49縦
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