その果てと、その始まりと
なかがわひろか
命からがら逃げて参りました
どこにもゆく当てなどはございませんが
走れるだけ走って
時に歩いて、
また走って
ここまで辿り尽きました
しかしここはゴールなのでしょうか
ここが私の行き着く先なのでしょうか
必死で必死で逃げて参りましたが
一体私は何から逃げているのでしょうか
もう体は動きませぬ
もう喉も枯れ果ててしまいました
もはや立つことも出来ないでしょう
私はまだ逃げなければならないのでしょうか
なんだか足音が聞こえて参ります
これは恐怖の音なのでしょうか
それとも恋人に会いに行く
愛しさに満ちた足音なのでしょうか
それでも私はまた逃げるしかないのでしょう
正体を知るのが怖いのです
もしも私を追ってくる物かと思うと
怖くて怖くて仕方がないのです
また果てのない逃亡が始まります
またどこかでお会いできますよう
お祈り申し上げます
(「その果てと、その始まりと」)