バトン
海月

静かな部屋で独りで呼吸をする
普段は聴こえる事ない音が流れる
自分自身の呼吸の音を聴くなんて久しぶりな気がする

静かな部屋の窓から外を見る
鮮やかなネオンが人々を魅了する
「忙しく時間は急ぎ旅をするみたいだね」と僕は呟いた

静かな部屋は騒がしさがあるから静かと感じる
何かがあるから僕らは対比を繰り返す
自分と他人を比べてその差に苛立ちを覚える

陸上リレーのバトン
誰かが僕の手に渡してくれた
それは「走れ、走り出せ」の合図なのかもしれない
その意味も気づかずに緩やかなテンポを維持してきた
埃が積もったバトンを握り締める

次の人に僕が渡す人なんだ
誰かと僕を繋ぐ絆?みたいものなんだ
それは「走れ、走り出せ」の合図なのかもしれない
その意味は未来永劫変化する事ない約束
バトンには偉人の手形が残る

静かな部屋は朝焼けの光と共に住人にも光が灯った
情熱は再び熱を帯びた
今は小さくて消えそうだけど過去を糧にして燃え上がる

バトンは次の人へと渡される



自由詩 バトン Copyright 海月 2006-11-16 00:05:56
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