バクの夢
なかがわひろか
俺の夢を喰って消化不良を起こした
そんな貘を捕らえるのは簡単さ
よっぽど腹が減っていたのか
喰い終わってすっかり夢の中
起こさないように
そっと近づいたら
両手足を縛って
じっくりととろ火で焼く
気づいた頃には丸焼けさ
皮膚(かわ)もパリパリに焼けていて
ちょうど良い具合
夢を喰われたお返しさ
どんな悪夢でも
お前の世話にはなりたかねえ
あいつの夢は少し辛い
そいつの夢は涙がかかったほんのり塩味
こいつの夢は甘ったるくてネバネバしてる
どいつの夢もくだらない
味付けがなっちゃいない
その点お前の夢は
意外にも
とってもとっても
うまいんだ
最後にお前にも
喰わせてやりたかったよ
(「バクの夢」)