月色
愛心

私は嫌なことがあると、まほー屋によく行った。
まほー屋とは、不思議な名前のお菓子がある駄菓子屋さんだった。
嫌なことがあると、そのお菓子を食べに行った。

友達と喧嘩したとき。
大切な物がなくなったとき。
親と喧嘩したとき。
テストで悪い点をとったとき。
失恋したとき。・・・etc

私が特に気に入っていたのは、月色という名の飴だった。
ビー玉くらいの、金色で透明なその飴が、好きで好きでたまらなかった。
口に含むと
蜂蜜とバニラアイスクリームを混ぜたような味で
とろりと溶け合った。

ひとつ50円と高めだったが、絶対に買っていた。
食べるだけで、嫌なことが全て綺麗に洗われた。
大好きだった。




ある日のこと、まほー屋はなくなった。
どこに行ったのかもわからなかった。
でも、ただ1つ、店があったところに落ちていた。

月色だった。








自由詩 月色 Copyright 愛心 2006-11-13 21:38:17
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